私はさえない普通の兼業主婦です。
夫と小学生の息子が3人います。
息子たちを育てながら働き、ごはんを作って家事をこなしつつ過ごす日々。
大変だけれどルーチン化された作業の連続に、脳の真ん中が麻痺する感覚がありました。
なんだか、毎日、つまらない?かも。
つまらないなんて贅沢だ、という気持ちが心をかすめます。
平々凡々な毎日は幸せではありますが、少しばかり刺激が少ないものですよね。
けれど、ひとにはやはり、何かしらの刺激というスパイスがあることで日々は輝くのではないでしょうか。
誰かに期待するのではなく、自分のことは自分で悦ばせよう。
そこで私は思い立ち、家族の誰にも内緒のとある「秘密」をもつことにしたのでした。
誘惑
その日、私は仕事を終えると、足早に駅近くのデパートへ向かいました。
ちょうど夫がテレワークで帰宅を急がなくてもよい日を選びました。
秘密を作るには用意周到でなくてはなりません。
デパ地下には様々な誘惑が待ち受けていますが、私の心は決まっていました。
前々から憧れていた高級な焼き菓子のお店のかわいいクッキー缶を買うと。
お目あてのお店の行例におとなしく並び、その間にいろいろ思いを巡らした結果、家族にもケーキを買おうと考えつきました。
私の目的はあくまでも、憧れのクッキー缶。
つまり、家族用のケーキはカムフラージュです。
帰宅が遅いことを家族は疑問に思うかもしれませんが、ケーキがあれば、家族は私がこのケーキを買うために少し帰宅が遅れた理由と納得するでしょう。
なにも、嘘はついていないのです。悪いことは、なにもしていないのです。
やはり罪悪感なのか、それとも私の家族愛の結果なのか。
でもそう、家族の喜ぶ顔というご褒美が我慢できなかったというのが、正直なところです。
お店のかわいい紙袋には、あこがれのクッキー缶と、それから家族用のケーキの箱の合計2つがお行儀よく入れられました。
金額が5000円にもなったので、ちょっと複雑な気持ちになります。
秘密にはお金がかかるのです。
偽装工作
さて駅近くの駐輪場まで着くと、私はクッキー缶だけをおもむろに紙袋から取り出し、通勤リュックの奥底にしずめました。
私は家族にお土産としてケーキを買って帰ってきた、ただの通勤帰りのヒトになりすましました。
特に悪いことをしているわけでもないのに、鼓動が速くなります。
何食わぬ顔で帰宅し、何も隠し事などない笑顔で、出迎えてくれた末っ子に高らかにお土産の紙袋を渡しました。
くったくなく喜ぶ末っ子の笑顔に、ちょっとだけ、ほんの少し針の先ばかりですが、胸がちくりとしました。でも悪いことは何ひとつしていません。
食後に薄切りにしたケーキを食べました。
上にしゃりしゃりするお砂糖のフィリングがかかった、甘すぎるくらい甘いケーキでした。
それは、秘密の味を含んでいたからでしょうか。
結局は洗濯機の上で
クッキー缶は、こっそりとリュックの底からキッチンの棚へ移しました。
家族のだれもあけない場所、でも隙をついて私がこっそり素早く取り出せる場所です。
夫と結婚し、子どもが生まれると、家の中では自分だけの場所はどんどんなくなりました。
実家では自分の部屋や自分の机、本棚があったのに、今や自分の場所は寝室のクローゼットくらいしかありません。
食事、空間、時間。なんでも家族とシェアする日々は喜びにあふれていますが、何も自分の場所がないということに少々息苦しさを感じるのも、ヒトの正直な気持ちなのでしょう。
このような気持ちを抱くことに、罪悪感を覚える必要はないと思います。
そうして私は結局、秘密のクッキーを洗濯機の上で食べています。
子どもたちの友達が家に遊びにきて、一緒にゲームをしている間に。
ひとりになれる空間が、脱衣所の洗濯機の上しかなかったのです。
けれど今は、これくらいがちょうどいい気がしました。
ちょっと家族の目をぬすんで、おいしいクッキーを洗濯機の上で食べるくらいが。
ちょっと切ないけれども、あこがれのクッキーは甘美な秘密の味がしました。
秘密はゲーム感覚で
仕事、子育て、それなりに落ち着いていて変化のないように思える毎日。
でも、ちょっとのことでも、別に悪いことをするんでなくても、自分だけの「秘密」をもつそれだけで、日々に刺激を与え、毎日を自分なりに楽しくアレンジすることはできるのです。
もちろん、誰も傷つけない秘密であることが絶対条件ではありますが。
ゲーム感覚で、秘密を作ってみませんか?
それでは今日も心晴れる1日を。
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